戦争で株価が下がる銘柄

株式市場は、企業の業績だけでなく世の中のあらゆるリスクを反映します。たとえば、政治や自然災害、戦争やテロのようなリスクを織り込みます。

その中でも戦争は、世界経済が長期にわたって影響を受けてしまう深刻な事象です。一口に戦争といってもどの国がどこで戦うのかで影響度合いも違いますが、過去の大きな戦争を振り返ると、第二次世界大戦のような地球規模の戦争は別にして、多くは民族・宗教・エネルギーの利害が対立し合う中東地域で勃発しており、たいていアメリカが中心的な交戦国です。

2020年1月には、アメリカがイランのソレイマニ司令官を殺害したことで、アメリカとイランが一触即発の状態になりました。トランプ大統領はもしイランが報復した場合、アメリカはさらなる大規模な報復を行うと宣言し、全面戦争へと発展するリスクが顕在化しました。

では、そのとき株式市場はどのような反応をしたのでしょうか。一つのモデルケースとして、戦争になったらどの銘柄が下がったり、上がったりするかの参考にはなると思います。以下にイラン危機が起こる前と後、東証株価33業種別株価指数の中で下落率がもっとも高かった業種の上位3種を挙げておきます。

【下落率上位業種(2019年12月30日⇒2010年1月6日)】

業種 下落率
海運業 ▲3.51%
空運業 ▲2.79%
農林・水産業 ▲2.68%

【時系列】
2019年12月30日(大納会)・・・イラン危機
2020年1月3日(休場日)・・・ソレイマニ司令官殺害
2020年1月6日(大発会)・・・イラン危機

詳しくみていきましょう。

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戦争で株価が下がりやすい業種

海運業

戦争の影響をもっとも受けて株価が下がりやすいのは海運業です。海運業とは商船やタンカー、LNG船で資源などの原材料や工業製品を海上で運搬する業種です。

代表銘柄 証券コード
商船三井 9104
川崎汽船 9107
日本郵船 9101

株価下落要因は以下の通りです。

株価が下がる主な理由は3つあります。

1.航路制限を受ける

2.燃料価格が高騰する

3.船舶保険料が高騰する

「航路制限を受ける」とは、戦闘地域の周辺海域や空母などの軍事作戦を展開する海域で航行できなくなるリスクのことです。通常使用している海上ルートが使えず、ルート変更を余儀なくされる結果、余計な運搬費用や日数がかかってしまい会社は損害を受けるのです。

「燃料価格が高騰する」とは、船舶を動かすのに必要な燃料の値段が上がることです。これは特に中東地域での戦争が起きた場合に生じやすいリスクです。中東地域が混乱して原油価格が高騰した場合、船舶用燃料は基本的に石油製品ですから、悪影響を受けます。会社の損益計算書上の費用が増加し、利益が圧迫されてしまいます。

「船舶保険料が高騰する」とは、船舶事故に対応する保険料が戦争の影響で高止まりするということです。たとえばイラク戦争時はペルシャ湾を航行するときの保険料が平時よりもかなり割高に設定されました。攻撃に巻き込まれる可能性や海上の機雷に触れて爆破する可能性があるからです。保険料の増加は会社の利益を圧迫します。

空運業

次に戦争の影響を受けて株価が下がりやすい業種は空運業です。空運業とはいわゆる航空会社のことです。

代表銘柄 証券コード
ANA 9202
JAL 9201

これも海運業と同じような理由が株価の下落要因です。

1.航路制限を受ける

2.燃料価格が高騰する

3.人の移動が停滞する

「航路制限を受ける」とは、戦闘地域の周辺空域での航行できなくなるリスクのことです。そういった空域では戦闘機や爆撃機が飛行しているため衝突する可能性があるからです。さらに、地対空ミサイルなども配備されているため誤って迎撃される恐れがあるため大変危険です。実際、2014年にはロシアのクリミア半島進出に伴うウクライナ内戦で民間のマレーシア航空機が撃墜されましたし、2020年のイラン危機でもウクライナ航空機がイランのミサイル誤射により撃墜されています。迂回ルートへの変更により燃油コストなどの超過コストが会社にのしかかります。

「燃料価格が高騰する」とは、航空機のジェット燃料の価格が上昇することです。特に中東などの産油地帯で石油生産の停滞が起こると原油価格は跳ね上がります。航空会社の費用に占める割合でもっとも大きなものは燃油費(たとえばJALの場合約18%)ですから、収益に対するインパクトは大きくなるのです。

「人の移動が停滞する」とは、そもそも戦争が勃発すると旅行やビジネスなどの航空輸送需要が減少します。緊急事態においては不要不急の移動は差し控えるよう各国政府や企業から通告されることも一般的です。結果、航空会社の売上が低下することにつながるのです。

また海運業と同じように、戦争によって航空機の機体保険料も値上がりします。

農林・水産業

最期は農林・水産業です。農林・水産業という括りですが特に水産業のことです。主に水産物の輸出入・加工を行う業種です。

代表銘柄 証券コード
マルハニチロ 1333
日本水産 1332

株価下落要因は以下の通りです。

1.物流コストが上昇する

2.漁業活動が停滞する

3.海洋汚染が発生する

「物流コストが上昇する」とは、戦争によって海運・空運などでヒト・モノの移動制限が生じると平時よりも運搬費用が増加するということです。供給が需要に追いつかなくからです。さらに中東地域での戦争となると原油価格も上がるため、運搬に係る燃油コストも上がります。水産業はさまざまな水産物を船舶で運ぶため、海運業と同じように物流コストの上昇は利益を圧迫してしまいます。また原油価格の上昇は、船舶だけでなく水産加工品を国内で流通させる際のトラック輸送費用の増加も意味します。

「漁業活動が停滞する」とは、紛争地域周辺の海域での漁業や養殖業の縮小を余儀なくされるリスクです。特定の海域でそういった制限を受けると、代替となる海域で採れる水産物の値段は上がりますから、企業の調達コストは増加することになります。

「海洋汚染が発生する」とは、戦争=必ず海洋汚染という訳ではありませんが、1991年の湾岸戦争時、タンカーや石油施設に対する攻撃の結果、大量の原油が海洋に流出しました。そうなると、漁業や養殖業にとっては深刻なダメージとなります。

戦争で株価が上がりやすい業種

今までとは逆に戦争で上がりやすい銘柄も簡単に見てみたいと思います。これは戦争ならすべて当てはまる訳ではなく、あくまで中東などの産油国を巻き込んだものという想定ですので、ご注意ください。ちなみにイラン危機前と後の、上昇率の上位業種は以下の通りです。

【上昇率上位業種(2019年12月30日⇒2010年1月6日)】

業種 上昇率
鉱業 +3.77%
石油・石炭業 +2.97%

鉱業

鉱業とは、石油開発の上流を担う産業です。つまり海外に石油や天然ガスの権益をたくさん持って採掘を行う企業のことです。鉱業には金属などの鉱山開発も含まれますがここでは対象にしません。株価が上昇する理由は、戦争による原油供給懸念から原油価格が上昇し、企業利益が改善するとみなされるからです。1970年代のオイルショックでは第四次中東戦争の影響で、原油価格が2倍以上急騰しました。

代表銘柄 証券コード
石油資源開発 1662
国際石油開発帝石 1605

石油・石炭業

石油・石炭業とは、石油開発の下流を担う産業です。石油の精製や販売、ガソリンスタンドの運営などを行う企業のことです。石炭はここでは対象にしません。株価が上がる理由は、鉱業と同じく原油価格の上昇が見込まれるからです。

代表銘柄 証券コード
コスモエネルギー 5021
JXTG 5020

防衛関連銘柄

その他は防衛関連銘柄です。日本の自衛隊向けの兵器や装備などを製造するメーカーが中心です。戦争が起こった場合、どこまで自衛隊が関与するかは分かりませんが、「戦争」というキーワードが先行して思惑買いにつながりやすいのが特徴です。

代表銘柄 証券コード
三菱重工 7011
川崎重工 7012
石川製作所 6208




おわりに

いかがでしたでしょうか。

戦争は多くの人命や資産に損害を与えるため、無いに越したことはありませんが、残念ながら過去しばしば起こっており、現在も世界各地に地政学リスクはあります。

戦争がいつどこで起きるのか誰も時期を予測することはできませんが、投資家としてはそのような事態に直面しても慌てることのないよう、あらかじめ銘柄の動きのイメージを掴んでおくことは大事ですね。

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